税務会計三直線

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「配偶者居住権」の終了!

現在、相続の相談を数件受けていますが、「配偶者居住権」の創設で課税関係の
把握が複雑になっています。

 私の考えは「配偶者居住権」をうまく使えばかなりの節税になると考えています。

 遺言書を作成したいので相談にのってほしいという案件があります。

 「配偶者居住権」の施行は2020年の4月1日からですので、いつ相続が開始するか
分かりませんので、当面、自筆証書遺言を作成しておいて、4月1日を過ぎたら、
「配偶者居住権」を織り込んで、公正証書遺言を作成しようと考えています。

 そのためには、「配偶者居住権」について、少なくとも、次の3点は知って
おかなくてはなりません。

 1、配偶者居住権の評価方法、

 2、配偶者居住権と小規模宅地等の特例との関係、

 3、配偶者居住権が消滅した場合の課税関係、

  今回は配偶者居住権の消滅を掲げておきます。

  「配偶者居住権」が消滅した場合、どのような課税関係が生じるか
よく理解し把握しておく必要があります。

「配偶者居住権」が消滅した場合の課税関係

 ①、合意解除により消滅した場合

   対価を支払わなかった場合、又は、著しく低い対価の場合ーーー建物の所有者に贈与税課税

 ②、放棄により消滅した場合ーーー建物の所有者に贈与税課税

 ③、民法1032条による消滅請求により消滅した場合ーーー建物の所有者に贈与税課税

 ④存続期間満了により消滅した場合ーーー課税なし

 ⑤、配偶者の死亡により消滅した場合ーーー課税なし

 ⑥、居住建物全部消滅により配偶者居住権が消滅した場合ーーー課税なし

 ⑦、配偶者より先に居住建物の所有者が死亡した場合

    所有者の相続人に相続税が課税されるが、配偶者居住権は影響されない。

 以上、7項目挙げてみましたが、通常は⑤の配偶者の死亡により消滅した場合
を想定すれば良いのではないでしょうか。

下に、民法の規定と、国税庁が発表している通達を掲げておきました。

   

 


第1036条(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)

第597条第1項及び第3項、第600条、第613条並びに第616条の2の規定は、
配偶者居住権について準用する。

相続税基本通達

(配偶者居住権が合意等により消滅した場合)

9-13の2 配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と
当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは
当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は
民法第1032条第4項*1の規定により
消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に
供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者
(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が、対価を支払わなかったとき、
又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として、当該建物等所有者が、
その消滅直前に、当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する
利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する
利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を
、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加)

(注) 民法第1036条*2において準用する
同法第597条第1項及び第3項*3並びに
第616条の2*4の規定により配偶者居住権が
消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。

*1:建物所有者による消滅の意思表示

*2:使用貸借及び賃貸借の規定の準用

*3:期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了

*4:賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了