War and Peace. N.Rostova and A.Bolkonsky
ウインナーワルツというと、すぐ思い出されるのが{戦争と平和」と
いう映画で観た舞踏会のシーンです。
オードリー・ヘップバーン扮する<ナターシャ>が軽やかに
<ボルコンスキー>と踊る華やかな舞踏会のシーンは今でも
鮮明に憶えています。
とても綺麗でした。
トルストイの「戦争と平和」を夢中になって読んだのは19歳の
時でした。
ほとんど1年間「戦争と平和」を読んでいたというくらい熱中しました。
<ピエール>は当時の私の理想の生き方でした。
<ピエール>のように朴訥で温かく心の広い人間になりたい
と思いました。
そして<ナターシャ>は私の理想の女性でした。
上の動画はヘップバーンではないけれど、
ナターシャとボルコンスキーとの出会いのシーンがあります。
初めての舞踏会で、寂しくお茶を引いてるナターシャを見て、
彼女を愛するピエールがボルコンスキーを紹介します。
その後、ナターシャとボルコンスキーは恋仲になりますが、
何故か、ナターシャは堅苦しさを感じています。
<ボルコンスキー>という恋人がありながら、浮気男に騙され、
駆け落ちしようとします。
全てが発覚して、ボルコンスキーも失い、
失意の<ナターシャ>に跪いて、彼女を心から愛するピエールは
「今までよりも一層貴女を愛します」
と、ナターシャの手に情愛のこもったキスをする。
「私は愛される資格のない女です」と涙するナターシャ。
私の一番好きなシーンです。
悪い男と知らずに信じてしまう、隙だらけだが純で綺麗な心の
ナターシャと、
深く広い心でナターシャを愛するピエールの真実の愛情に心
が激しく動きました。
愛というものは良いものも悪いものも愛する者の全てを
受け入れる事だ、とその時知りました。
小説は色々なことを教えてくれます。
ナターシャが何故、浮気男の誘惑に乗ってしまったのか、まだ、
19歳の私は真剣に考えました。
ボルコンスキー侯爵は文武両道に優れ、立派な青年だが、ナターシャ
はいつも気取った気持ちでいなければならない存在でした。
そんな時、浮気男の激情的な手管に、これこそ本当の恋だと
考えてしまったのでしょう。
ピエールと結婚した後のナターシャは大空を自由に飛び回るオオワシ
のように、伸び伸びと、心の隅々まで幸せな女性になります。
本当に得たいものを手に入れたピエールとナターシャは
この上なく幸せな人生だと思います。
先日読んだ、「神鵰侠侶」に<郭芙>という女性が登場します。
彼女は有名な夫婦の一人娘に生まれ、お嬢様として何不自由なく
暮らし、望むものは全て手に入れ、夫は<耶律楚材>の息子で文武
に優れた<耶律斎>、何の不満もない最高の人生の筈でした。
しかし、何故か、いつも寂しさが心を占めています。
ある日、その訳が分かったのです。
幼馴染の<楊過>という青年がいて、彼とはいつも喧嘩ばかり
している仲でした。
彼には<小龍女>という心から愛する女性がいます。
<郭芙>は自分が本当に好きなのは<楊過>だったことに気付く
のです。
次の文章は<郭芙>の心を描写した小説中の1節です。
{何一つ欠けたものなどない、これまでの自分の一生。けれど、心の奥底に、
言い知れぬ悲しみがある。欲しがるものは何でも与えられてきたが、
最も切望するものは、決して手に入らないーーーーーー}
そう思って<郭芙>ははらはらと落涙するのです。
人生で、本当に得たいものを手に入れること、これほど無上の
喜びはない、と、
長い人生を生きてきた私は心からそう思います。