30年以上昔、バブル華やかかりし頃、取引先の
銀行からクラブのママさんを紹介されました。
ママさんのマンションを訪れると、中年の男性が現れて、
挨拶を交わしました。
名刺を見ると、大手建設会社の部長さんでした。
建設会社の部長くらいでクラブのママのパトロンになれるのか
と感心しました。
さて、色々と話が進み、売上帳を見せていただくことに
なりました。
「はい、これが売掛帳です」と一冊の帳面を渡されました。
売り上げたお客様の名前と金額、いつ入金になったか等が
克明に記されていました。
「掛売りと現金売りはどの位の割合ですか?」
「そうねぇ、掛が7割、現金が3割くらいかしら」
「現金での売上は現金出納長に記載されてるんですか?」
「そんなものないわよ」
「えっ?現金の売上は計上しないんですか?」
「どこだってやってることでしょう。現金売りを売上に
あげてるクラブなんてありぁしないわよ」
「それじゃ、脱税じゃないですか」
「そこを何とかするのが税理士の仕事でしょう」
「いやぁ!困りますねぇ、うちはそういうのはやらないん
ですけど」
「それじゃぁ、単なる帳面屋じゃない」
「はい、すみません、単なる帳面屋です」
取引先の銀行の紹介だから、事を荒立てるわけには
いきません。
散々、嫌味を言われて、こそこそと帰ってきました。
月に1千万円くれたってやりたくないと思いましたね。
私にだってお客を選ぶ権利はありますよ。