税務会計三直線

税務、会計、経営について主に書いていきます。

「持分なし医療法人」への移行を考える!

 

 

 医療法人の顧問先で、規模が大きく、又、地域の医療への貢献度

も高い診療所は、出資のほとんどを所有する理事長の相続が発生

した時、廃業することも出来ず、かと言って、多額の相続税を負担

しても、遺族は何の遺産も取得出来ない、という悲惨な現実が待って

います。

 

 この場合、「持分なし医療法人」へ移行せざるを得ないと考えます。

 

 移行すれば、相続税贈与税が免除されます。

 

 持分なし医療法人への移行は、3年間限定(平成29年10月1日

から平成32年9月30日)までの認定制度です。

 

 今年9月30日が期限ですから、あと半年しかありません。

 

 以下、厚生労働省のパンフレットから、主な内容を紹介してみます。

 

1、認定要件

 

  ①、移行計画が社員総会において議決されたものである事、

 

  ②、出資者等の十分な理解と検討のもとに移行計画が作成され、持分

   の放棄の見込みが確実と判断されること等、移行計画の有効性及び

   適正性に疑義がないこと、

 

  ③、移行計画に記載された以降期限が3年を超えないものであること、

 

  ④、運営に関する要件を満たすこと、

 

2、制度の概要

 

  ①、移行計画が認定されれば、納税額は猶予され、 移行計画の

   認定の日から3年以内に出資持分を放棄すれば、猶予税額は免除されます。

 

  ②、また、出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分が増加することで、

   贈与を受けたものとみなして他の出資者に贈与税が課される場合も上記と

   同様になります。

 

  ③、移行計画に基づき「持分なし医療法人」へ移行した場合、出資者の持分放棄

   に伴う法人贈与税は非課税となります。

 

  ④、移行後6年間、毎年、運営状況を厚生労働省に報告、

 

 

3、運営に関する条件

 

<運営方法>

 

 ①、法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと、

 

 ②、役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めて

   いること、

 

 ③、株式会社等に特別な利益を与えないこと、

 

 ④、法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽等の事実その他交益に反する

  事実がないこと、

 

<事業状況>

 

 ①、社会保険診療等に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること

 

 ②、自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準

  によること、

 

 ③、医業収入が医業費用の150%以内であること、

 

 

4、移行計画の認定から持分なし医療法人への移行までの流れ

 

 

 持分あり医療法人               厚生労働省都道府県

 

 *、持分なし医療法人への移行の検討、

 

 *、移行計画の申請、定款変更について

  社員総会で議決、

 

              ーーーーーーーーーー厚生労働省による

                             移行計画の認定               

 

 *、厚生労働省へ移行計画の申請、

 

              ----------都道府県による

                             定款変更の認可

 *、移行計画の認定を受けた旨を記載した

  定款変更を都道府県へ申請、

 

 

 *、移行に向けた具体的な動き、

    +出資者の持分放棄の手続き

    +持分の払戻がある場合の対応

 

 *、持分なし医療法人への定款変更

  について社員総会で議決、

 

 

 *、持分なし医療法人への移行について

  の定款変更を都道府県に申請

 

              ----------都道府県による

                             定款変更の認可

 

 持分なし医療法人

 

 *、定款変更の認可に伴い、「持分なし医療法人」

  への移行が完了、

 

 

 *毎年、運営状況を厚生労働省へ報告

  (6年間)