税務会計三直線

税務、会計、経営について主に書いていきます。

孤独と音楽 その1 少年時代


 独身時代、私はいつも孤独でした。
 4畳半一間の下宿で10年間暮らしました。

 ステレオと勉強机と本棚しかない殺風景な部屋です。
 仕事を終えて、暗がりの中で手探りに裸電球を点けて、本を読んだり
音楽を聴いたり、銭湯に行って帰って寝る、そんな暮らしです。

 休日は図書館へ行ったり、公園を散歩したり、場末の映画館で
映画を観たりして過ごしました。

 淋しかったですね。この淋しさは永遠に続くのだと思いました。

 深い海の底を漂っているような孤独感の中に、クラシック音楽
なだれ込むように私の心を満たしていったのです。

 でも、このような生活は独身者の誰もが経験していることでしょう。

 何故、私はあのように人一倍愛に飢えたような青春を
送ったのでしょうか。
 それは私の生い立ちに起因しているような気がします。

 小学校1年生の時、家が貧しかったので、私は父の弟の家に
預けられました。
 今でも覚えていますが、食事は皆と別に3メートル位離れた場所に
小さなちゃぶ台で一人で食べました。
 食べ物も皆と違って粗末な物でした。皆と同じあの美味しい物を
食べたいなと思いながら食事したことを憶えています。

 冬でした。きっと辛かったんだろうと思います。
 私は深夜その家を抜けだし、夜の山道を手探りで歩きながら、
自分の家族の住んでいる家に帰りました。
 そして、寝ている母の布団に後ろから潜り込みました。
母は何も言いませんでした。
 そして、その後、父の弟の家に戻ることはありませんでした。
(続く)