税務会計三直線

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相続時精算課税制度のメリット、デメリット!

 

 


今回のテーマは<相続時精算課税制度>のメリット
デメリットです。

 

 最初に<相続時精算課税制度>の基本をもう一度
おさらいしておきます。

1、相続時精算課税制度の基本

①、2500万円まで非課税、

②、2500万円を超えると、超える部分について20%
 の税率で贈与税が課税される、

③、一度、この制度を選択すると、暦年課税に戻れない、

④、贈与者が亡くなった時は相続財産に合算して
 相続税として精算、

⑤、合算する時の価額は贈与時の価額、

⑥、納付した贈与税相続税額から控除し、控除しきれない
 贈与税額は還付される、

⑦、贈与者は60歳以上の親、又は祖父母、受贈者は贈与者
 の20歳以上の推定相続人、及び孫、

⑧、贈与財産の種類・金額・贈与回数に制限はない、

⑨、贈与者ごとに適用出来る、

ざっと、基本的な事項はこんなところでしょうか。


では、この制度のメリットを挙げてみます。

2、メリット

①、一度に多額の贈与が出来る。

 暦年課税の贈与ですと、110万円の基礎控除を超える
 と贈与税が生じますが、この制度は2500万円まで非課税
 なのと、贈与者ごとに適用できるので、


  例えば、
 両親・祖父母からそれぞれ2500万円づつ贈与を非課税
 で受けることもできます。

②、値上がりする見込みの財産は有利。

 値上がりすると予想される株式とか、インフレに向う時の
 土地とか、です。


  これは相続財産に加算される時、贈与時の価額で加算
 されるからです。

③、特定の者に、生前に財産を移転できる。

自宅は長男に相続させたい、とか、この財産だけはあの子
 に残してやりたい、とか、自社株を会社を後継する子に
 贈与する、といった場合によく使われます。

  相続税を支払うのは構わないが、遺産分割の際、難しい
 事にならないように生前に財産を移転させる目的に適して
 います。

④、収益物件を贈与して相続税対策する。

  例えば、アパートやと賃貸マンションといった収益物件を
 贈与すれば、後の収益が受贈者の物となり、贈与者の財産
 の増加を抑える効果があります。

  土地を贈与する必要はなく建物だけ贈与します。

  ただ、建物の価値の値下がり分は相続時に不利になりますが
 抑えられる収益のほうが多ければ、贈与する価値はある筈です。

  この案件は難しい問題がたくさんあるので、必ず、
 税理士のアドバイスの基に行うことをお勧めします。
                       

 

 私はこの制度の適用には極めて慎重です。理由は、
節税効果がほとんどないからです。

1、贈与税の暦年課税なら、110万円を4回贈与
 すれば、440万円の財産が相続財産から外れるが、

 この制度で2500万円使って非課税と言っても
 相続時は2500万円全額が加算され、節税と
 言う意味では全く効果がありません。

2、節税という意味では暦年課税や住宅取得資金贈与
 や1500万円までの教育資金贈与の方が圧倒的に
 優れています。

3、その他のデメリット

 ①、小規模宅地等の特例が使えない、

  自宅を贈与したり、事業経営の土地を贈与したり、
 アパート等の収益物件の敷地を贈与すると、
 小規模宅地等の特例を使えず、大幅に不利になります。

 ②、この制度を一度利用すると、暦年課税に戻れない
 ので、余程、覚悟して利用することです。

4、私が過去にアドバイスして扱った例では、

 ①、親の金使いが荒くどんどん 財産が目減りするので、
 やむなく、この制度を使って主要な財産を贈与したこと、

 ②、相続時に兄弟争いが想定されたので、この制度を
 使って贈与した、

等々、特殊な事情で、相続税の課税を無視した贈与を
アドバイスしました。

5、収益アパートの贈与

 この場合、古くなった建物を贈与すると、確かに、収益
が受贈者の所得になり相続対策として有効のようですが、

 建物を贈与したため、土地が使用貸借となり、
貸家建付地の評価減が行われず、相続税計算で過去の収益
よりも多くの相続税を支払うことになります。

親が思いがけず早死にしたため計算が狂うことがあります。

中々、難しいですね。