手許現金は相続開始時の被相続人が所有する現金の
全てを計上する、---これが解答です。
しかし、死亡時に1円まで現金を管理しているなんて
ことはほとんど不可能でしょう。
ですから、凡そ、誰がみても妥当と思われる金額、と
いうことになります。
一般に、葬式費用や医療費の支払いのために、
相続開始前に預金を引き出しておきます。
何故なら、相続が開始すると一定の手続きが
終わるまで預金が凍結されるからです。
仮に、相続開始2日前に預金を700万円引き出して
いるとしましょう。
葬儀終了後、葬式費用に500万円、医療費の支払い
に200万円使って、手元に10万円しか残って
いなかったとしても、
相続開始時には、少なくとも、710万円の
現金が手元にあったことになります。
それを、手許現金10万円で申告すれば、
税務調査を受けて訂正する羽目になります。
葬式費用、未払医療費は負債として控除する訳ですから、
手許現金として計上すべき金額は710万円です。
税務当局は相続税の申告があると、
過去10年間の全預金の出入りを調べる
と考える必要があります。
相続開始前3年間位の預金は厳密に調べるべきです。
税務調査でもっとも否認されるのがこの手許現金と
名義預金です。
恐らく、否認の80%以上を占める筈です。