税務会計三直線

税務、会計、経営について主に書いていきます。

人間の本質は善か悪か?

 少年時代、私が小学校5年生の時の事です。
 
 同じ町内のA君が、番長と自称するボスに苛められ、
殴られていました。
 
 私は見かねて止めに入り、その番長君と殴り合いの
喧嘩の末、A君を助けました。
 
 以来、彼は私の子分みたいにいつも私について回り、
良い友達となりました。
 
 家は貧しく、成績もクラスでいつも最低のほうでしたが、
性質が穏やかなので、私と相性が合ったのでしょう。
 
 6年生になって、ある日、もう、秋のことです。
 
 二人で海岸に遊びに行きました。
 
 海岸に人の気はほとんどなく、浜辺に色々な珍しいもの
が打ち上げられていました。
 
 ふたりであちこち拾い歩いて喜んでいました。
 
 その時、私がもの凄く素晴らしいものを見つけました。
 
 何か忘れましたが、とにかく、心が躍る素敵なものでした。
 
「あ、凄いや」と私はその物を手にしました。
 
 その時、A君がパッと、それを横から奪い取ったのです。
 
「何するんだ、僕が最初に見つけたんだろう」と言って、
取り返そうとしたら、私の頭を殴って逃げていきました。
 
 余程、欲しかったんでしょう。
 
 10メートル位逃げてから、ふり返って、照れくさそうに
笑ったが、そのまま、行ってしまいました。
 
 私は呆然としました。
 
 腕力で奪い返そうと思えばできましたが、それ以前に、心に
受けた衝撃で動けませんでした。
 
 あれだけ面倒を見て、可愛いがったA君が、目先の一寸した利
のために、私を裏切るなんて考えられないことでした。
 
 人の良い私のことだから、彼がそれを欲しいと言えば、
きっと、彼にあげたと思うんです。
 
 彼とはその時を境に交友がぷっつり絶えました。
 
 成人後、彼がどろぼうをして刑務所に送られたという噂を、
風の便りに聞きました。
 
 私から奪った品物をしっかり腕に抱いて、照れくさそうに笑った
彼の顔を、今でも鮮明に憶えています。
 
 その後、私は、どうして人間は善人と悪人が出来るのか、ずっと、
考えつづけました。