税務会計三直線

税務、会計、経営について主に書いていきます。

発生主義の売上なんて株式の含み益みたいなもの、現金を手にして何ぼでしょう。

。早く利食いしなきゃ、泡のように消えちゃうよ(笑)

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 それを痛烈に思い知らされた出来事でした。

 まだ、税理士として駆け出しの頃の話です。


  私のお客様に、30歳台前半の有能な青年がいました。

  彼は工作機械の輸入販売を商っていました。

 

  ある日、どういう経由でか忘れましたが、新開発の小型機械の製造
という大きな仕事が舞いこんできました。

 

  相手は一部上場企業です。


  彼は今までの人脈を頼って、材料、外注先を確保し、製造に乗り
出しました。

 

  総売上数億円という仕事です。たかだか5,6人というメンバー
 の会社にとっては大仕事です。

 

  やっと生産も軌道に乗り、納品開始です。

 

  検収2ヶ月後に全額手形で支払われました。
  5ヶ月手形です。

  毎月納品しました。
  5枚手形が溜まりました。

 

  納品7ヶ月後に最初に貰った手形の期日がきました。


  期日当日、皆、わくわくしながら、固唾を呑んで当座預金に入金
されるのを待ちました。

 

  しかし、入金されません。不渡りです。

 

  その一部上場企業は倒産しましたが、こちらも倒産です。

 

  我々は呆然としました。5枚の受取手形と2ヶ月分の売掛金未回収
です。

 

  発生主義では

  受取手形  150,000千円/売上  210,000千円
   売掛金    60,000千円/

 

です。


  当時、「キャッシュフロー計算書」はありませんでしたが、
もしあれば、「営業キャッシュフロー」はマイナス150,000千円位
でしょう。

 

  今でこそ、一部上場企業だの、大手銀行だのと言ったとて、余り
信用しませんが、当時、一部上場企業と言えば、絶対の信頼をおいた
 ものです。

 

 

  今でも考えますよ。

  あの時、私がどのような行動を取れば、あの事件を未然に防げた
 だろうか、と。

 

  やはり、信用調査するとか、
  半金を前受け金で頂くとか、
  相手の財務諸表を詳細に分析するとか、

 

しなければいけなかったのでしょう。

 

  担当税理士の、痛恨の事件として、この出来事は今でも私の胸に
深く刻まれています。

 

  発生主義の売上に、私はいつも不信感を抱いています。
  現金を手にして何ぼですよ。

 

  発生主義の売上なんて、株式の含み益みたいなものですね(笑)
  早く利食いしなきゃ、泡のように消えちゃうよ!