過日、ある人から
「経営が困難に陥っている会社があるけど、一寸、見て
くれないか」
と言われて、B社を紹介されました。
機械部品を購入販売している会社です。
この会社は会計事務所担当者をスカウトして取締役
に迎えていました。
早速、会計組織、財務諸表を見ると、日頃の荒利益
の正確な把握が出来ていないな、という印象を持ちま
した。
会計処理は間違えていないのですが、正確な荒利益が
把握出来ていない会計組織なので、1年間、果たして
儲かっているのか儲かっていないのか分からないと
いう状態です。
月次決算を組んでいても在庫が変動しているので、
荒利益がわからないのです。
その上、資金繰り悪化で、銀行借入れの為、決算書
を粉飾して無理やり利益を計上しているので、更に、
実態が不明です。
B/Sを詳査すると、棚卸資産や売掛金が過大計上に
なっています。
そこで、まず私が考えたことは受注した一つ一つのjobに
対して荒利益表を記帳し、荒利益を管理することでした。
すると、色々なことが分かってきました。
売上を上げるために大幅な値引き販売を繰り返して
いました。
平均して7%位の荒利益率しかありません。
又、販・一の金額から想定して、20%の荒利益率を確保
しないと会社の経営が困難であることが分かりました。
社長にその旨を話すと、20%の荒利益は達成可能だ
ということなので、早速、実行して貰いました。
B社は私に色々なことを教えてくれました。
社長は恐らく、優秀な会計マンだと信じて会計事務所
担当者をスカウトしたのでしょうけれど、彼は会計処理
は優秀だったけれど、経営というものがよく分かって
いなかったこと、
そして、
会計組織、会計処理というものは、ただ、正しければ
良いというものではなく、会社の実態をもっともよく
表し、会社の経営を向上させるものでなくてはいけない
のだということ、
を、痛烈に私に知らしめました。
税務会計が出来ても、経営が分かるとは限りません。
会計のプロでも経営のアドバイスが出来る人は
何割もいないと思っています。
これは一種の才能であって、煎じ詰めれば、人間に
対する洞察力であろうかと考えます。
これは私が才能があると思いあがっているわけでは
ありません。
一般論としてそう考えるわけです。