税務会計三直線

税務、会計、経営について主に書いていきます。

貸家を母親が、宅地を長男が相続、<貸付事業用宅地等>はどうなる?

今回は、建物と宅地等の取得者が異なる場合、
貸付事業用宅地等>はどうなるか?というお話です。

例、


1、宅地 140㎡
   山本一郎(長男)が相続、

2、アパート建物 300㎡
   山本花子(妻)が相続、

こうした事案は時折見かけます。

結論から言うと、

このケースは<小規模宅地等の特例>の適用はありません。

この事案は<貸付事業用宅地等>がどのようなものかを
考える場合の格好の例となります。

何故、このような相続を行う必要があるかというと、

1、建物の所有者が所得を得ることが出来るので、
 母親の老後の生活費を確保したい、

2、建物は年々減価するが土地は減価しないので、
 第二次相続対策の為、息子が土地を相続する、というもの、

こうした考え方もそれぞれ説得力がありますが、

<小規模宅地等の特例>の適用はありません。

その理由、

貸付事業用宅地等」とは、

被相続人の「不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業等」
の用に供されていた宅地等で、次に揚げる要件のいずれか
を満たすもの、

(1)被相続人の貸付事業を相続開始後に事業承継する場合

①、その宅地等を取得した被相続人の親族が相続開始時
 から相続税の申告期限まで貸付事業を引き継ぐこと、

②、その親族が相続税の申告期限までその宅地等を
 所有すること、

(2)生計一親族の貸付事業の用に供されている場合

①、その宅地等を取得した被相続人の親族が被相続人
 生計を一にしていた者であること、

②、その親族が相続開始時から相続税の申告期限まで
 引き続きその宅地等を所有すること、

③、その親族が相続開始前から相続税の申告期限まで
 引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供して 
 いること、

貸付事業用宅地等>となる為の要件を挙げると
以上のようですが、

説例の場合、

宅地を取得したのは長男で、貸付事業を継続したのは
建物を相続した母親です。

適用要件を見ると、

貸付事業を継続した者が宅地等を取得していなければ
なりません。

ですから、このケースは<小規模宅地等の特例>の
適用がないことになります。

配偶者が宅地等を取得して無条件に特例の適用が
あるのは<特定居住用宅地等>だけです。

貸付事業用宅地等>は事業継続者と宅地等の取得者
が同じである必要があります。